国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)

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国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)は、障がいのある方も、ない方も、
すべての人にご利用いただける施設です。障がい者が主役の芸術・文化・国際交流活動の機会を創出し、
障がい者の社会参加促進をめざします。施設内には、多目的ホールや研修室、宿泊室、レストランを備えています。

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BiG-I Art’s Seminar/「知的財産など話題がたくさんありそうな対話型セミナー」レポート

障がいのある人の創作活動を行う中での、日々の疑問
複数の事業所のスタッフでおしゃべりしながら、解決へのヒントを模索!


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2023年1222日(金)に、大阪府羽曳野市にあるハピバール(社会福祉法人ふたかみ福祉会、生活介護事業所・就労継続支援B型事業所)で、「知的財産などがたくさんありそうな対話型セミナー」を開催しました。

講師に後安美紀さんを迎え、後安さんが所属する一般財団法人たんぽぽの家発行『身近な事例から学ぶ、知的財産50のQ&A』をもとに、芸術文化活動を行う際に役立つ著作権の知識を得たり、日頃の疑問を話し合ったりして、対話しながら学び、交流する機会としました。

このセミナーレポートでは、当日の様子とともに、いくつかの疑問をピックアップし、具体的なエピソードや意見を紹介します。「そうそう、気になっていた!」「なるほど。こう考えるといいんだ」など、日々の支援のお役に立てていただけると嬉しいです。

セミナー概要

日時

2023年1222日(金)10301830

場所

ハピバール(大阪府羽曳野市西浦1112番地2

 
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セミナーの始まりは、会場である事業所の見学から

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同セミナーは「about me」の一環として開催しました。

about meとは、障がいのある人の創作活動について美術的評価ではなく、「表現と人」との関係性に重きを置いた参加型展覧会プロジェクトです。福祉事業所スタッフを中心に、アーティストやアートディレクター、ギャラリーオーナー、研究者、ジャーナリストなど、多分野の人々によって取り組んでいます。

人材育成と福祉事業所間のネットワーク構築もめざしているため、同セミナーを企画。対話できることを重視していたので少人数に設定し、過去7年の出展事業所等に声をかけました。

会場も「about me 7」出展事業所の1つ、ハピバールです。

CS_2.JPG[写真]事業所ツアー

最初に、施設長の西岡美紀さんご案内のもと、事業所ツアーからスタートしました。創作活動の現場だけではなく、トイレや更衣室、作業室なども見せてもらいます。

CS_3.JPG[写真]創作現場や更衣室も見学

お昼は、併設されているカフェで、カレーやベーコンポテトサンド、タコライスといったランチをいただきました。その後もドリンクやスイーツをいただきながら、話が尽きません。

「創作活動の部屋が2つあったり、絵を描いたり、立体物をつくったりするほか、陶芸をしたりジャムをつくったりカフェの仕事をしたり、いろんな選択肢があるんだなぁ」「施設内に、カフェスペースがあるのはいいなぁ」といった感想から、「海外から作品についての問い合わせが来たけれど、本物かどうかがわからなくて、そのままにしていたものが…」など気になりながらもそのままにしていたことが、ぽろっ、ぽろっと飛び出しました。そのメールを一緒に確認するなど、一つひとつの話題に対してみんなで丁寧に考えていきます。

CS_5.JPG[写真] 昼食中も話が止まらない

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既存のキャラクターを描いた作品は、著作権侵害になるのか

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講師を務めてくださった後安美紀さんは、生態心理学の知見から、演劇、ダンス、絵画の制作プロセスを観察し、制作者や鑑賞者の行為や知覚を研究してきた研究者で、2017年から一般財団法人たんぽぽの家のスタッフでもあります。

たんぽぽの家で、知的財産権を活用しながら障害のある人のアート活動を支えるプロジェクト等に従事し、今回教科書として用いた『身近な事例から学ぶ、知的財産50QA』にも企画・制作として関わっています。

同書は、創作・発表から広報、販売、契約・保管、トラブル対応まで、表現にまつわる知財の悩みを、50QAでまとめている一冊です。それをもとに、著作権や販売、作品のデジタル化など、さまざまな話に広がっていきました。

最初に話題にあがったのは、作品に描かれた既存のキャラクターについて。

参加者:アニメが好きな利用者さん。アニメのキャラクターを描いているんですが、ご自身の世界観が表れた作品になっています。しかし、オリジナルなのか、記憶に残っている既存の物語なのかがわかりません。利用者さんのよさが出ている作品なので、発表やグッズ化してはどうかとの声が寄せられていますが、既存のキャラクターを描いたものなので著作権法上、発表やグッズ化はNGでしょうか?

参加者:既存のキャラクターの顔と、ご自身が好きな生き物の身体を組み合わせて描いている利用者さん。見れば、どのキャラクターを描いているのかがわかります。作品展示するだけなら問題ないかと思っていましたが、グッズ化して販売すると商売になるので、著作権法上はNGになるのでしょうか?

CS6.JPG[写真]講師の後安美紀さん

後安さんは「既存のキャラクターを描くこと自体は『私的使用』となるので問題ありませんが、それを発表することは『複製権の侵害』にあたるのでNGとなります」と話したうえで、

後安さん:二次創作(ファンアート、既存のキャラクター等をもとに独自の作品を創作すること)として「著作権の申し立てがない」「著作権者がおそらく認めている」といった考えから発表されているものもあります。既存の作品をそのまま写して描いたものを発表することはNGですが、作品全体を見た時に作者のオリジナリティが出たものは二次創作と言えるでしょう。たとえば、部分的にキャラクターが描かれていたとしても、それらは全体の絵を構成する“素材である”という解釈が成り立つので、その作者の作品として認められるケースもあります。

と言います。

しかし、「大丈夫かな」「訴えられないかな」という不安はつきまとうものです。どうしても気になる場合の対処法として、たんぽぽの家が共同運営に加わるエイブルアート・カンパニー(障がいのある人のアートを、デザインを通して社会に発信する組織。3つのNPO法人で共同運営)の事例を紹介してくださいました。

 後安さん:著作権の申し立ての可能性が高いキャラクターものはグッズ化しなかったり、固有名詞(キャラクターや作品、メーカー名など)の入るタイトルは変更したり。どうしてもグッズ化したい場合は、著作権者に確認しています。

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著作権はどんな時に“譲渡した”ということになるのか

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最も盛り上がった話題は、契約のことです。著作権について、抱きやすい誤解も明らかになりました。

参加者:ポストカードにして販売していた絵の原画を、誰かに購入していただいた場合、購入者にすべての権利が移りますか? その原画をもとに制作したポストカードは、販売中止しなければなりませんか?

この疑問に対して、「原画を販売しても、購入者には譲渡されるのは所有権のみ。著作権は『著作権を譲渡する』という契約を結ばない限りは著作者・著作権者のまま。よって、引き続きポストカード販売は可能」と後安さん。

そこで「所有権だけが譲渡されるとは知らなかった!」という声が多くあがりました。原画購入者の中にも「原画を購入すれば、その原画を自由に使っていい」と誤解している人がいるかもしれません。

そこで、たんぽぽの家では、トラブルを回避するためにも、販売時に「原画の所有権のみ移ります」「今後も引き続き、この原画をもとにしたポストカード販売などを行います」といったことをまとめた書類を渡していると言います。

CS7.JPG[写真]各事業所の事例や取り組みも紹介し合う

もう一つ。契約の話で話題にあがったのは、事業所で材料費等を負担したり、スタッフも一緒に制作に加わったりした作品の著作権は、本人にあるのか、事業所にあるのかということ。

「法人の方針による」と後安さん。法人によって、著作権は「本人のままに」「法人側で」「著作権は本人だが、法人が発表や販売等を代行する」など、さまざまな方針を立てていると言います。

いずれにしても、「本人と事業所の間で話し合うこと。口約束であっても契約とはなるが、トラブルが起きないように契約書をつくるほうが安心」と後安さん。

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作者が複数の事業所で描いた作品を販売したい場合は?

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最近の傾向として2つほど、話題に上がったことがあります。1つは、複数の事業所に通う利用者が制作した作品の取り扱いについて。

参加者:2事業所を行き来している利用者さん。画材等は個人で用意し、1つの作品を持ち運んで2事業所で制作しています。いい作品が出来上がったので販売したいとなった場合、その2事業所のどちらに販売の権利があるのでしょうか?

「著作権者である本人が決めること」と後安さん。本人が意思の疎通が困難な場合は、親権者、さらには事業所間での話し合いの必要性が出てくると言います。事業所間での話し合いでは、その作品の画材提供や制作時間の比率が1つの指針になるとのこと。

そういった話を受け、「利用者さんが別の事業所に変わる場合、今までの作品を返却してほしいと言われるかもしれない。返却はもちろん、また場合によってはグッズ化していた商品を販売できなくなることだってあるかもしれないということ。そういった可能性も考えながら、契約書をつくっておくことが必要だと思った」と参加者。契約書の重要性がますます増してきていることを感じ合う出来事でした。

契約書というと、弁護士など専門家にも加わってもらって作成しなければならないというイメージがあるかもしれません。後安さんが言うには、「互いの合意の上であれば、口約束であっても契約のうちに入る」とのこと。ただし、「書面で残すほうが得策」とも。

CS8.JPG[写真]本も見ながら話は進む

また、デジタル作品について。たとえば、

参加者:ペンタブやiPadで絵を描く利用者さん。データを渡すことは原画を渡すようなもの。悪用されることが恐いので、パネル化して販売しています。そうなると、データさえあればパネルは生産できるので、1点ものとは違うのかなとも。販売価格をどのように決めたらいいのかを迷います。

という疑問には「NFT(関連づけることで、デジタル資産の所有者や取引履歴を管理・追跡を可能にする技術)」とそれを生かしたコミュニティについて話が及びました。そのほかにも、

参加者:自宅でデジタル作品をつくっているので、事業所でもやりたいという声をいただくことがあります。その環境を整えるには費用もかかりますし、みんながやりたいとなった場合はどうすればいいのか。これから入所してくる人たちの中には、デジタルで作品を描くことに慣れている人も増えてくると思うので、対応していったほうがいいのかなと思いながら、そのままになってしまっています。

という声には「最近は特別支援学校でiPadを提供してもらい、自宅に持っているという人もいる場合も」といった声が出ていました。

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1事業所の取り組みは、他事業所の発見やヒントにつながる

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CS9.JPG[写真]少人数制だからこその話しやすい雰囲気

今回紹介したほかにも、たくさんの疑問が飛び出しました。たとえば、「絵を販売し始めた経緯は?」「トラブルに発展した事例は?」「原画の販売をどう広げていったらいいか」「原画販売時、顧客情報を収集しているか」「同じ作者の作品なのに、事業所によって価格の付け方が異なる。別の作品であっても、作者のファンからすると納得いかないのでは」「自宅で創作したものを事業所で販売してほしいと言われた場合はどう対応しているか」「著作権等担当する専門スタッフを配置しているか」など。

これを読んでくださっているみなさんの中にも、「その疑問、私も思っていた!」というものがあるのではないでしょうか。

著作権に関わることは総じて、各事業所でどう考え、どう判断していくかによるものが大きいようです。そのためには、自分たちの事業所だけで考えているより、他事業所、さらには複数の事業所のスタッフとも集まって取り組みなどを共有することで、考えるもとや選択肢を増やす機会になるのではないでしょうか。

今回の対話の中で、何度かキーワードとして出ていた“集合知”。集合知とは、「多くの人の知識が蓄積したもの。また、その膨大な知識を分析したり体系化したりして、活用できる形にまとめたもの(出典:デジタル大辞泉[小学館])」という意味です。今回はまさに、そういう機会になっていました。

講師の後安美紀さん、そしてご一緒してくださったみなさん、ありがとうございました!

CS10.JPG[写真]参加者全員で集合写真

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