国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)

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国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)は、障がいのある方も、ない方も、
すべての人にご利用いただける施設です。障がい者が主役の芸術・文化・国際交流活動の機会を創出し、
障がい者の社会参加促進をめざします。施設内には、多目的ホールや研修室、宿泊室、レストランを備えています。

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愼英弘の部屋VOL.12「共生社会」の実現に向けた政策提言

平成122000)年の社会福祉基礎構造改革における福祉サービス利用の契約制度化により、支援のあり方が「自立支援」へと大きく舵が切られました。

その後も「共生社会」の実現に向け、法令等の整備が行われてきましたが、令和2(2020)年1月からの新型コロナウイルス感染症により、障がいのある人の地域生活は危機に晒されました。

感染症法上の分類変更で、ようやくコロナ前の生活に戻りつつありますが、コロナ禍では、「いじめ」や「虐待」、「DV」等が増え、共生社会の実現には程遠い現実を突きつけられることになりました。

障がいのある人は「一人の人間として普通に暮らしたい。」ただそう願っているだけです。この思いで政策提言をまとめました。しっかりと受け止めていただき、早急に提言を実現してくださるよう、強く求めます。

令和72025)年2月6日

「共生社会」の実現に向けた政策提言(概要)

<はじめに>

障がいのある人は、「いわゆる健常者と同じ土俵で競い合える環境を整えてほしい。
一人の人間として普通に暮らせるようにしてほしい。その為の支援がほしい。」と願っているだけ。

<政策提言>

総論:社会的障壁の解消
社会的障壁(4つのバリア)を解消するための具体的な取組みを実行すること。

政策提言1:条例の制定
エスカレーター上での歩行を禁じる条例を制定すること。

政策提言2:インクルーシブ防災の実現
インクルーシブ防災(障がいのある人を含むあらゆる人の命を守る、誰も取り残さない防災)を実現するための具体的な取組みを実行すること。

政策提言3:生活を支えるための活動への支援の充実
安心・安全な住まいの場を確保するとともに、就労支援など生活を支えるための活動への支援を充実すること。

政策提言4:気軽に「余暇活動」に関われる環境整備
「余暇活動」の社会的価値を高めるとともに、障がいの有無にかかわらず誰もが、いつでも、どこでも、気軽に「余暇活動」に関われる環境を整えること。 

政策提言5:広報・啓発の充実
障がいや障がいのある人への正しい理解を深め、全ての人が自分らしい生き方や幸せを追求できるよう、広報・啓発を充実すること。 

政策提言6:「行政の福祉化」の進化
「行政の福祉化」から「大阪の福祉化」へ取組みを進化させること。

 

< 結びに>

行政サービスの基本は、「真に必要な人に、必要な時に、必要なサービスが行き届くこと」です。早急に政策提言を実現してくださるよう、強く求めます。

 

<はじめに>

 平成12(2000)年の社会福祉基礎構造改革において、利用者の立場に立った社会福祉制度を構築するため、行政が行政処分によりサービス内容を決定する措置制度から利用者が事業者と対等な関係に基づきサービスを選択する契約制度へと大きく転換されました。(福祉サービスの契約制度化)
障がい福祉分野においては、平成15(2003)4月に「支援費制度」が導入され、障がいのある人の自己決定に基づきサービスが利用できることとなりましたが、障がい種別間の格差やサービス水準の地域間格差などの新たな課題も生じました。

 これらの課題を解消するため、平成17(2005)11月に「障害者自立支援法」が公布されました。新法では、障がい種別ごとに異なっていたサービス体系を一元化するとともに、障がいの状態を示す全国共通の尺度として「障害程度区分」(現在は「障害支援区分」)が導入され、支給決定プロセスの明確化・透明化が図られました。また、国が費用の1/2を義務的に負担する仕組みや、サービス量に応じた定率の利用者負担(応益負担)が導入されました。
(法改正により現在は「応能負担」と「応益負担」の二本立て)

 その後、障がい者の範囲に難病等が追加されるなどの法改正により、平成25(2013)年4月には「障害者自立支援法」は「障害者総合支援法」となり、現在に至っています。

 この他にも、最近新たに制定・施行された主な法律として、障がいのある人に合理的配慮を行うことなどを通じて共生社会の実現を目指す「障害者差別解消法」【H28(2016),4施行】、文化芸術活動を通じた障がいのある人の個性と能力の発揮及び社会参加の促進を目的とする「障害者文化芸術活動推進法」【H30(2018),6施行】、障がいの有無にかかわらず全ての人が読書による文字・活字文化の恩恵を受けられるようにするための「読書バリアフリー法」【R元(2019),6施行】、障がいのある人による情報の取得利用・意思疎通に係る施策を総合的に推進し、共生社会の実現に資する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」【R4(2022),5施行】があります。

 共生社会の実現に向け、法整備は着実に行われていると思われますが、それだけで真の共生社会が実現できるものではなく、大事なことは、整備された法令を正しく使うことではないでしょうか。そのためには、法令に基づく制度・施策の構築や社会全体の理解、障がいのある人の支援者の確保などが必要ですが、現実にはまだまだ不十分と言わざるを得ない状況です。

 令和2(2020)年1月に初めて日本で確認された新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々を巻き込むパンデミックとなりました。勿論、障がいのある人々の生活に大きな影を落としたのは言うまでもありません。令和5(2023)年5月に感染症法上の分類が5類に移行され、ようやくコロナ前の日常に戻りつつありますが、コロナ禍では、残念ながら「いじめ」や「虐待」、「DV」などが増えました。これらは言うまでもなく人権侵害であり、「命」にかかわる大きな問題です。 

 その背景には、「密」を回避するため、好きなスポーツや芸術文化活動などのいわゆる「余暇活動」の機会が少なくなり、同じ空間を共有しながら、同じ空気感を味わいながらコミュニケーションを取る機会が極端に減った結果、人の温もりや優しさに直接触れることができず、人々の心に余裕がなくなり、心の健康を保てなくなったことが大きな要因ではないかと考えられます。

 特に、日常生活を周りの支援に頼らざるを得ない障がいのある人にとっては、支援者の確保すらできないなどの支障が生じ、これまでにも増して生活のしづらさを抱え地域生活が危機に晒されました。

障がいのある人は、「特別に優遇してほしい。」と思っているわけではありません。「いわゆる健常者と同じ土俵で競い合える環境を整えてほしい。一人の人間として普通に暮らせるようにしてほしい。その為の支援がほしい。」と願っているだけなのです。

例えば、昨今、利便性や効率性からICTAIなどの活用が盛んに行われています。これ自体を否定するものではありませんが、こうした技術革新は、まずは障がいの有無などによる格差是正、言い換えれば障がいのある人の活躍の場を拡げるために活用すべきです。これまでの技術革新を振り返ると、利便性、効率性を重視するあまり、いつも格差是正は後回しにされてきた歴史があるのではないでしょうか。

 少しのサポートで同じ土俵で競い合えるにもかかわらず、そのサポートがないために、そのサポートが不十分なために、同じ土俵にすら上がれずにいる障がいのある人がたくさんいます。共生社会の実現を目指すと叫ばれて久しいですが、その実現には程遠い現実があるのではないでしょうか。

障がいのある人にとって優しいまちは、全ての人に優しいまちとなります。現実をしっかりと受け止め、ユニバーサルデザインの考え方に従い、健常者との格差をなくすことが共生社会の実現には不可欠です。今こそ、インクルーシブな社会づくり、排除のない社会づくりが求められているとの基本的な認識に基づき、以下のとおり提言をまとめました。予算や人員等の制約があるかもしれませんが、それは国や自治体側の理由であって、障がい当事者に責任のあるものではありません。早急に提言を実現してくださるよう、強く求めます。

 

<政策提言>

総論:社会的障壁の解消

社会的障壁(4つのバリア)を解消するための具体的な取組みを実行すること。

障害者基本法第2条第2項において、「社会的障壁」とは、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」とあります。一般的には、次の4つのバリアが社会的障壁と言われています。

1)物理的なバリア

公共交通機関、道路、建物などにおいて、移動や動作を行う際に困難をもたらす物理的なバリアのこと。例えば、路上の放置自転車、狭い通路、急こう配の通路、ホームと電車の隙間や段差、建物までの段差、滑りやすい床、座ったままでは届かない位置にあるものなど。解消するには、施設・設備の改修や設計段階でバリアを生み出さない計画作成などが必要です。

2)制度的なバリア

社会のルールや制度、条件が整っていない、又は認知されていないことによって、障がいのある人が平等な機会を得られないバリアのこと。例えば、学校の入試、就職や資格試験などで、障がいがあることを理由に受験や免許などの付与を制限するなど。解消するには、ルールの見直しや従業員の理解促進などが必要です。

3)文化・情報面でのバリア

情報の伝え方が不十分であるために、必要な情報が平等に得られないバリアのこと。例えば、視覚に頼ったタッチパネル式のみの操作盤、音声のみによるアナウンス、点字・手話通訳のない講演会、分かりにくい案内や難しい言葉など。解消するには、伝達方法や案内の工夫、手話や点字の対応、バリアフリー情報の事前発信などが必要です。

4)意識上のバリア

周囲からの心ない言葉、偏見や差別、無関心など、障がいのある人を受け入れないバリアのこと。例えば、精神障がいのある人は何をするか分からないから怖いといった偏見、障がいがある人に対する無理解、奇異な目で見たりかわいそうな存在だと決めつけたりすることなど。解消するには、ポスターや動画などでの啓発、障がいのある人への理解を促す研修の実施などが必要です。

これらのバリア解消のため、「身体障害者補助犬法【H14(2002),10施行】」や「障害者虐待防止法【H24(2012),10施行】」、「障害者差別解消法【H28(2016),4施行】」、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法【R4(2022),5施行】」など、様々な法律が制定・施行されていますが、それだけでバリアが解消されるものではありません。法律に基づく制度や施策、ルールなどの整備が必要です。当事者の意見を聞き、改めて現存するバリアを把握するとともに、バリア解消のための具体的な取組みを実行することが必要です。

政策提言1:条例の制定

エスカレーター上での歩行を禁じる条例を制定すること。

1914年に日本初の常設のエスカレーターが東京の日本橋三越本店に設置されて今年で111年になります。エスカレーターは駅や空港、商業施設やテーマパークなどに多数設置され、今や私たちの生活を支える重要な社会インフラの一つとなっています。

 一方で、エスカレーターをめぐっては、人的被害が生じる事故も発生しています。(一社)日本エレベーター協会の調査では、2018年1月~201912月の間に、1,550件の事故が発生しており、その主な原因としては、歩行による転倒や手すりにつかまらなかったことによる転倒といった「乗り方不良」が全体の5割超を占めていると報告されています。また、事故は増加傾向であるとの報告もあります。

 そもそもエスカレーターの安全基準は、ステップ上に立ち止まって利用する事を前提にしています。エスカレーター上での歩行は、病気やケガなどで左右いずれかの手すりしかつかまることの出来ない利用者にとって、危険な事故に繋がる場合があります。また、自身でバランスを崩して転倒するおそれや他の利用者と接触して転倒させるおそれがあり、非常に危険です。

 また、「エスカレーターで片側空けをすると輸送効率が下がる場合がある。」との調査結果もあります。これは、立ち止まって利用する人の割合が多い場合、片側が空いていてもそちらを選ばず、立ち止まる列に並んでしまうためだという事です。

大阪府では「福祉のまちづくり条例」を制定・施行し、先駆的にバリアフリー化に取組んできました。この条例の前文には、「全ての人が自らの意思と責任によって、自分らしい生き方や幸せを追求することができる『自立支援型福祉社会』を実現することを府民の総意として、この条例を制定する。」とあります。

 目前に迫っている大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。「一人ひとりのいのちを守り、いのちの在り方、生き方を見つめ直すことで、未来への希望を世界に示す万博」となることを目指しています。この機会に、命を大切にする安全で安心なまち、自分らしい生き方や幸せを追求することができるまち大阪を目指すためにも、埼玉県や名古屋市の先例を参考にして、早急にエスカレーター上での歩行を禁じる条例を制定・施行することが必要です。

 

政策提言2:インクルーシブ防災の実現

インクルーシブ防災(障がいのある人を含むあらゆる人の命を守る、誰も取り残さない防災)を実現するための具体的な取組みを実行すること。

NHKの調べによると、平成23(2011)年の東日本大震災では、障がい者手帳を持つ人の死亡率は、全住民の死亡率の2倍に上りました。平成28(2016)年の熊本地震や令和6(2024)年の能登半島地震でも、多くの障がいのある人や高齢者に必要な支援が届きづらい状況が課題となりました。

今後も、高い確率で起きるとされている南海トラフ地震をはじめ、大規模な災害が起きる可能性が高く、障がいのある人や高齢者が取り残されることのないよう、社会全体で「インクルーシブ防災」を実現しなければなりません。このための仕組みづくりが必要です。

現在、避難行動要支援者名簿の作成が各自治体に義務付けられています。名簿に基づき「誰がどのように、どこへ避難させるか」といった具体的な計画(個別避難計画)を作成することも求められていますが、支援者の確保が難しいなどの理由で、多くの自治体で思うように策定が進んでいないようです。

また、福祉避難所の整備も進んでいません。整備されていても、能登半島地震では、開設できた福祉避難所は半数以下にとどまりました。そもそも福祉避難所が被害を受けていたり、人手不足で支援者の確保が困難だったことなどが大きな理由のようです。

大規模災害が発生したとき、国や自治体(行政)の支援だけでは不十分です。災害派遣福祉チーム(DWAT)をはじめ、介護職員等の福祉専門職の力が大きな役割を果たすことは、これまでの経験で私たちは十分学んできました。

しかしながら、能登半島地震の際には、派遣された福祉専門職から、「現場では司令塔がいなく混乱していた。」との話も聞きました。本来は、DWATが司令塔の役割を果たすべきですが、DWAT自身が経験不足などにより十分な役割を果たせていないのではないでしょうか。早急にDWATの体制の充実・強化が必要です。併せて、災害ボランティアの育成にこれまで以上に力を入れる必要があります。

今年は、阪神・淡路大震災から30年、「インクルーシブ防災」が広まるきっかけとなった、仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」から10年の節目の年です。

仕組みができても「絵に描いた餅」では意味がありません。「インクルーシブ防災」の実現のため、実効性のある取組みが必要です。

 

政策提言3:生活を支える活動への支援の充実

安心・安全な住まいの場を確保するとともに、就労支援など生活を支えるための活動への支援を充実すること。

総務省の「令和3年社会生活基本調査」によると、1日24時間の生活時間の配分は、1次活動で10.57時間、2次活動で6.47時間、3次活動で6.16時間となっています。

  • 「1次活動」は、睡眠、身の回りの用事、食事
  • 「2次活動」は、仕事等(通勤・通学、仕事、学業)、家事関連(家事、介護・看護、育児、買い物)
  • 「3次活動」は、移動(通勤・通学を除く)、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌、休養・くつろぎ、学習・自己啓発・訓練(学業以外)、趣味・娯楽、スポーツ、ボランティア活動・社会参加活動、交際・つきあい、受診・療養、その他

言い換えれば、「1次活動」とは、生活の拠点である住まいの場で過ごす時間であり、主に身体的機能の維持・向上、肉体的疲労の回復などに使う時間、「2次活動」とは、主に仕事で収入を得たり家事・育児などで生活を支える活動に使う時間、「3次活動」とは、自由時間、すなわち余暇活動の場で過ごす時間であり、主に心の健康を保つために使う時間ということになります。

「1次活動」について、障がいのある人にとっては、グループホームも重要な住まいの場です。ところが、マンションの管理組合が「部屋を住宅以外に使わないよう定めた管理規約に違反する。」としてグループホームとして使わないよう社会福祉法人に求めた裁判がありました。
1審では管理組合の訴えを認め、社会福祉法人側が控訴していましたが、控訴審で大阪高等裁判所は、「マンションの部屋は利用者の生活の拠点で、住宅としての使用にあたる。」として、1審とは逆に管理規約に違反しないと判断しました。その上で、グループホームが障がいのある人の地域生活を支える住宅であることを相互に確認する事などの和解案を示し、双方が受け入れました。
管理組合の思想は、排除の理論であり、明らかな差別であると言わざるを得ません。インクルーシブな社会づくり、排除のない社会づくりが叫ばれているにも拘らず、現実にはこうしたことが起きています。誰もが安全で、安心できる住まいの場を確保できるよう、社会全体で取組む必要があります。

「2次活動」について、例えば、厚生労働省の「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」によると、日本の障がい者数は、1,164.6万人と推計されており、人口の約9.3%に当たります。障がい者手帳所持者に限っても、610万人です。一方で、令和5年の民間企業による障がい者の実雇用者数は、わずか64.2万人です。高齢等の事由により障がいのある人の全てが就労を希望するものではありませんが、今の雇用・就労環境から、就労を希望しながら諦めている障がいのある人が相当数いることは、想像に難くありません。
そこで、ICTを活用した遠隔就労など、新たなツールを活用した時代に応じた働き方を開拓し、障がいのある人に意欲と能力に応じて活躍できる場を提供できるよう、社会全体で取組む必要があります。そのための雇用・就労支援施策など、障がいのある人の生活を支える活動への支援の充実が必要です。

 

政策提言4:気軽に「余暇活動」に関われる環境整備

「余暇活動」の社会的価値を高めるとともに、障がいの有無にかかわらず誰もが、いつでも、どこでも、気軽に「余暇活動」に関われる環境を整えること。

 「余暇活動」とは、スポーツやレクリエーション活動、文化芸術活動など、自己実現のための活動であり、人々の生活に潤いをもたらす不可欠な活動です。こうした活動は、心に余裕をもたせ、心を癒す効果があり、心の健康を保つために必要な活動です。すなわち「生活の潤滑油」です。

私たちは日々の生活の中で、「寝ること、食べること」で身体的な機能の維持・向上を図ったり、肉体的疲労を回復させたりしています。同じように「余暇活動」により、精神的な安定を保ったり、ストレスを解消するなど心の疲れを回復させたりしています。

このように、「寝ること、食べること」と「余暇活動」は、車の両輪としての役割があり、その一方でもなくなったり、バランスが壊れるようなことがあれば、その人の生活そのものを壊してしまい、場合によっては命に関わる問題にもなります。

しかしながら、現実的には、こうした活動は、個人的な趣味・嗜好と考えられ軽視されている、あるいは優先順位が低い(必要ない)と考えられているのではないでしょうか。車のハンドルに「遊び」があるように、人々の生活にも「遊び」が必要です。この必要な「遊び」こそが「余暇活動=心の健康を保つための活動」から生み出されるものです。

この「遊び」は、障がいの有無に関係なく必要である事は言うまでもありませんが、障がいのある人にとっては、特に、「余暇活動」へのアクセスやコミュニケーションに関する支援が不十分なため、いつでも、どこでも、気軽に関わる事ができません。健常者と同じように、いつでも、どこでも、気軽に関わる事ができる環境を整えることが必要です。

なお、政策提言3でも記載した通り、余暇活動は「3次活動」に当たります。「1次活動」、「2次活動」と併せ、3つの活動は生活に不可欠です。また、そのバランスも大事です。このように政策提言3と4は、1日24時間をどう使うかという問題であり、切り離して考えることはできません。障がいのある人の生活が少しでも良くなり、活躍の場が拡がるよう、社会全体で取組む必要があります。

 

政策提言5:広報・啓発の充実

障がいや障がいのある人への正しい理解を深め、全ての人が自分らしい生き方や幸せを追求できるよう、広報・啓発を充実すること。

 「障害者に関する世論調査」【内閣府、R5(2023),2公表】によると、「世の中には障害のある人に対して、障害を理由とする差別や偏見があると思うか」と聞いたところ、「あると思う」とする者の割合が88.5%、「ないと思う」とする者の割合が9.8%となっています。

また、「障害を理由とする差別や偏見が『あると思う』とする者(1,562人)に、今から5年前と比べて障害のある人に対する差別や偏見は改善されたと思うか」と聞いたところ、「改善されたと思う」とする者の割合が58.9%、「改善されていないと思う」とする者の割合が40.4%となっています。

この結果から、全体の1/3以上が「差別や偏見があるが、5年前と比べても改善されていない。」と思っていることになります。

そもそも差別とは、その人の価値観やどうしようもない属性、例えば、女性だから、障がい者だから、外国人だから、等々の理由でその人を認めない、その人を受け入れない、その人を排除するという事であり、人権に関わる大きな問題、人権侵害です。コロナ禍で増加した、「いじめ」や「虐待」、「DV」などからも明らかなように、命に関わる問題です。全ての人が人権について正しく理解し、人権意識を高めなければなりません。

現在、様々な形で「人権研修」が義務付けられていますが、一度や二度の研修で人権について理解することはできません。繰り返し、繰り返し継続して行うことで理解が進むものです。そして人権侵害が起きた時、無意識に行動できるまで意識を高めなければなりません。

災害が起きた時、人は無意識に命を守ろうと行動します。人権も命に関わる問題です。同じように無意識に行動できるまで意識を高める必要があります。そこまで高まって、初めて人権について理解したことになるのではないでしょうか。勿論、障がいや障がいのある人への正しい理解も同じことです。

「啓発」というものは「やり過ぎる」という事はありません。むしろ、「やり足りない」事が問題です。もはや「啓発」や「研修」という言葉でごまかすのではなく、幼いころからの「教育」と位置づけ、生涯にわたる継続的な取組みが必要です。これまでの広報・啓発のあり方を抜本的に見直し、より効果の上がる充実したものにする必要があります。

 

政策提言6:「行政の福祉化」の進化

「行政の福祉化」から「大阪の福祉化」へ取組みを進化させること。

大阪府では、府政のあらゆる分野において、福祉の視点から総点検し、住宅、教育、労働などの各分野の連携のもとに、施策の創意工夫や改善を通じて、障がいのある人やひとり親家庭の父母、高齢者などの雇用・就労機会を創出し、自立を支援する取組みである「行政の福祉化」に、全庁を挙げて取組んできました。

その結果、大阪府では、清掃業務による就労訓練の場の提供やハートフルオフィスの設置、府有施設の清掃業務に係る総合評価一般競争入札制度の導入、指定管理における就労困難者雇用の評価、福祉のコンビニ「こさえたんショップ」の取組みなどの成果が上がっています。

更に、平成29(2017)年度には、行政の福祉化のさらなる推進のため、大阪府社会福祉審議会に行政の福祉化推進検討専門部会を設置し、平成30(2018)年3月、提言を取りまとめました。提言では、基本理念である「障がい者、生活困窮者、ひとり親、就労困難者など生活に困難を抱える者を支援するため、『それぞれが持てる資源』を有効に活用すること」を大阪全体で共有し、「大阪の福祉化」をめざすとされています。

その具体的取組みとして、プレイヤー(担い手)を大阪府だけではなく、地方独立行政法人や市町村等へ拡大していく事、また、拡大にあたっては、それぞれの主体が別々に取組むのではなく、例えば関係者が一堂に会したラウンドテーブルを設けるなど、それぞれが有機的につながりながら連携した取組みが進むよう検討する事となっています。

提言を実現するために、平成312019)年4月のいわゆるハートフル条例の改正はあったものの、それ以外の取り組みは進んでいるのか疑問でなりません。「行政の福祉化」から「大阪の福祉化」に向けた取組み状況を明らかにするとともに、取組みを更に進化させることが必要です。

 

< 結びに>

行政サービスの基本は、「真に必要な人に、必要な時に、必要なサービスが行き届くこと」です。第5次大阪府障がい者計画【令和6(2024)年3月改定】をはじめ、大阪府の行政計画の完全実施はもとより、計画に位置付けられていなくても、必要なサービスは行っていただく必要があります。

また、来年度から次期大阪府障がい者計画の策定作業が始まると聞いています。当該計画のみならず、大阪府のあらゆる計画に、今回お示しした政策提言の趣旨・内容を盛り込んでいただくようお願いします。

今回の政策提言は、いずれも「命」に関わる大きな問題です。「教育」と位置づけ、生涯にわたって取組むべき課題です。「命の尊さ」、「命の重さ」をしっかりと受け止めていただき、早急に政策提言を実現してくださるよう、強く求めます。

行政サービスの基本は、「真に必要な人に、必要な時に、必要なサービスが行き届くこと」です。第5次大阪府障がい者計画【令和6(2024)年3月改定】をはじめ、大阪府の行政計画の完全実施はもとより、計画に位置付けられていなくても、必要なサービスは行っていただく必要があります。

また、来年度から次期大阪府障がい者計画の策定作業が始まると聞いています。当該計画のみならず、大阪府のあらゆる計画に、今回お示しした政策提言の趣旨・内容を盛り込んでいただくようお願いします。

今回の政策提言は、いずれも「命」に関わる大きな問題です。「教育」と位置づけ、生涯にわたって取組むべき課題です。「命の尊さ」、「命の重さ」をしっかりと受け止めていただき、早急に政策提言を実現してくださるよう、強く求めます。

 

<政策提言に協力を求めている団体(者)>

・(一財)大阪府身体障害者福祉協会 ・大阪府肢体不自由児者父母の会連合会
・(一財)大阪府視覚障害者福祉協会 ・(公社)日本オストミー協会大阪府支部
・(公社)大阪聴力障害者協会 ・(社福)大阪府社会福祉協議会
・(特活)大阪府中途失聴・難聴者協会 ・大阪府障がい者スポーツ協会
・(社福)大阪府肢体不自由者協会 ・大阪府民生委員児童委員協議会連合会
・(一社)大阪脊髄損傷者協会 ・(一財)大阪府人権協会
・大阪頸髄損傷者協会 ・(社福)産経新聞厚生文化事業団
・(社福)大阪手をつなぐ育成会 ・(一社)エル・チャレンジ <L’s College
・大阪精神障害者連絡会 ・(特活)手話言語獲得習得支援研究機構<NPOこめっこ>
・(公社)大阪府精神障害者家族会連合会 ・大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合<エル・チャレンジ>
・ピープルファースト大阪 ・(特活)大阪精神障害者就労支援ネットワーク<JSN
・大阪府重症心身障害児者を支える会 ・有限責任事業組合大阪職業教育協働機構<A’ワーク創造館>
・(公社)日本てんかん協会大阪支部 ・(一財)大阪府地域福祉推進財団<ファイン財団>
・(一社)日本筋ジストロフィー協会大阪支部 ・(一財)大阪民間社会福祉事業従事者共済会<民共済>
・(一社)大阪知的障害者福祉協会 ・(一社)よりそいネットおおさか
・(特活)大阪精神医療人権センター ・(一社)大阪希望館
・障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 ・ビッグ・アイ共働機構
・障害者(児)を守る全大阪連絡協議会 ・(社福)大阪障害者自立支援協会
・きょうされん大阪支部
・大阪「生活の場・事業所」連絡会
・(一財)大阪市身体障害者団体協議会
・(特活)大阪市難聴者・中途失聴者協会
・(社福)大阪市手をつなぐ育成会
・(特活)大阪難病連
・(特活)大阪盲ろう者友の会
・(特活)デフサポートおおさか
・(公財)阪喉会

<発起人>

・愼英弘(国際障害者交流センター ビッグ・アイ 館長)

・冨田一幸(大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合 エル・チャレンジ 代表理事)

・神尾雅也(社会福祉法人 大阪障害者自立支援協会 評議員)

・西口禎二(社会福祉法人 大阪障害者自立支援協会 理事長)

 この政策提言は、コロナ禍においては、支援者の確保すらできない等、障がいのある人の地域生活が危機に晒され、共生社会の実現に向けた理想と現実に大きなギャップがあるのではないか、また、相次ぐ大規模自然災害により浮き彫りにされた課題として、誰も取り残さない防災(インクルーシブ防災)の実効性のある仕組みづくりが急がれているのではないか、といった今日的な問題意識から、当事者の意見をはじめ、今後の障がい福祉分野を心配する声を拾い上げ、取りまとめたもので、令和7(2025)年26日に大阪府に提出しました。

 ◆提出先:大阪府福祉部障がい福祉室

◆提出者代表:愼英弘(国際障害者交流センター ビッグ・アイ 館長)

◆問い合わせ先:社会福祉法人 大阪障害者自立支援協会 西口禎二

TEL)06-6776-1221

FAX)06-6776-1224

Mailnishiguchi@daisyokyo.or.jp

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