国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)

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国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)は、障がいのある方も、ない方も、
すべての人にご利用いただける施設です。障がい者が主役の芸術・文化・国際交流活動の機会を創出し、
障がい者の社会参加促進をめざします。施設内には、多目的ホールや研修室、宿泊室、レストランを備えています。

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ビッグ・アイリレーコラムVol.9 「『誰一人取り残さない』ホール」:谷 哲也

ビッグ・アイリレーコラムVol.9 「『誰一人取り残さない』ホール」

株式会社ハートス 谷 哲也

『誰一人取り残さない』ホール

人にとって、豊かな芸術と文化に触れることは、充実した生活を送るために不可欠なことです。それは、障がいのある人にとっても、普通に豊かな芸術と文化を享受できること、そして、障がいのある人が主体者となって、普通に芸術を創作する側になることは普遍的な事実です。

私は国際障害者交流センタービッグ・アイの多目的ホールの運営を開設当初から携わっています株式会社ハートスの谷哲也です。ビッグ・アイの多目的ホールの運営は他のホールとは全く違った運営手法が求めあれます。それは、技術的なサポートに始まり、ちょっとした心遣いまで様々です。今回のコラムはビッグ・アイでおこなっている障がいのある方へのサポートを披露させていただきます。

【ビッグ・アイ多目的ホールの設備】

ホールで求められるのは音響性能、照明、映像等の演出力がホールの評価となりますが、ビッグ・アイはそれらに加え、あらゆる方が、鑑賞ができ、かつ、演者や講演者として舞台にあがることができるようになっています。

◇入口ドア
劇場のドアは防音のため、重い開き戸となっていますが、ビッグ・アイの入口ドアは、車イス利用者、もしくは手に力を入れにくい方でも、容易に扱える特殊な開閉をする自動ドアとなっています。

◇フラットな構造
多くのホールは音響性能を維持し、収容人数を確保するために面積を一定の範囲に抑え、2階席、3階席を作り、縦方向に拡張していますが、ビッグ・アイの多目的ホールは収容人数に対し、非常に広い面積を確保しています。それは定員1500席の内、客席前部の800席が1部もしくは全部をフラットにできる構造となっており、車いす席の数を0~300席まで設定できる構造となっているからです。
 「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」では「客席の数が400席以下の場合は2以上、400席を超えた場合には2にその400席を超える席数200席ごとに1を加えた数以上であること」とされています。つまり、ビッグ・アイでは車いす席を8席設ければ基準をみたすことになります。新しい劇場、また、多くの施設は改修し、この基準を満たす車イス席を設けていますが、ほとんどが固定席となっているため、車イス利用者が自由に座席を選ぶことはできませんが、ビッグ・アイは事前の設定で自由に車いす席を設定できます。
 また、車いす席には、人工呼吸器など使いながら鑑賞ができるように床の各所に電源があります。
 そして、楽屋から舞台、客席から舞台までも段差がない構造となっていますので、誰もが登壇できます。

◇情報保障
舞台での演出や講演などを、主に聴覚に障がいがある方、視覚に障がいがある方に舞台で行われている演出や講演を伝えるための設備を備えています。
 まず、赤外線ループを活用し、聞こえにくい難聴者に対し音声補聴、視覚に障がいがある方に音声ガイドを流せるシステムがあります。また、映画も放映できる中央の大画面(横約16m×縦約6m)のスクリーンと大型プロジェクターに加え、舞台両端に123インチのマルチビジョンがあり、手話の拡大画像や要約筆記の画像を放映することができます。

◇緊急時
火災などが発生し、避難が必要となった時、通常の音響と光で伝える以外に、4つのデジタル時計に非常文字表示を行い、聴覚障がい者に避難が必要となった理由を伝えます。
 1階に6つ、2階に2つの入口ドアは、火災発生と同時に自動開放し避難路を確保します。

【ホールスタッフとして】

 私は30年に渡り、8カ所の劇場や音楽ホールで照明を専門とする技術スタッフをしてきました。どのホールでもお客様が求められる、それぞれのプログラムが効果高く実現できるようにしてきました。時には「予算が少ないから」というご要望も、知恵を絞り効果高く実現できるよう提案をしてきました。
 私はビッグ・アイで6年間従事していますが、どのプログラムの開催にあたってもお客様とご相談をし、時には陰ながら様々な来館者に対し、他の施設にはない配慮を行っています。
 これは、打合せから始まります。視聴覚に障がいがある方との打ち合わせでは、誤解のないように、様々な手法で実際のイメージを持っていただくようにしています。時にはプログラムの仕様を画像でお見せし、実際のプログラムをお客様と共有するようにしています。その仕様画像は私が携わったほとんどプログラムを記録しており、数百種類にも及び、様々な障がい種別に対応した記録ともなっています。
 そして、ビッグ・アイのホールを熟知していることから、障がいのある方自身さえお気づきになられないところへの配慮も常に心掛けています。客席の位置や舞台上での配置は、事前のお客様のイメージはどうしても配置図に書いた2次元です。それを劇場の空間として3次元にイメージアップし、様々な障がいがある方にとって、安全かつ最適かを判断させていただいています。
 本番においては、通常のホールでも行われている以上に、マイクの高さや位置、入力音声の強さ、照明のあたり具合、登壇者への情報の伝え方、そして、客席におられるそれぞれの障がいのある方への音声の届き方など時間をかけ充分なチェックを行っています。
 例えば、正面からの強い照明と暗い客席のため、方向や距離感が惑わされる舞台に上がられる障がいのある方への配慮は、事前のチェックは完璧に行い、本番中も舞台の進行を妨げないことを念頭に登壇者の動きを注視させていただいています。

 私が心掛けていることがあります。それは長いホール運営からくる経験は、お客様に最善の提案ができると考えますが、その経験に頼ることなく、それぞれのお客様、特に障がいのある方にとって、最高のプログラムができるように配慮を行い、お客様とともに創ることです。 
 「こんなことをしたい。でも...」、「こんなことできればいいけど無理」、「いろんな人に聞いて欲しいけど、そんなことできる?」、「あの人に舞台に上がって欲しいけど大丈夫?」など、まずはご相談をして下さい。建物の構造など改善が困難な物理的な課題もありますが、何らかの代替方法や当方のスタッフとお客様が協力し、人的な手法で解決できることもたくさんあります。ぜひとも、ご一緒に考えさせていただき、実現させていただきたいと思います。

 そして、ビッグ・アイの多目的ホールは「誰ひとり取り残さない」ホール運営を行っていきます。

 次回は快適で安全にりようできるよう24時間施設の維持管理をしていただいているビッグ・アイ業務課施設管理グループの谷口さんにバトンを渡します。

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