国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)

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愼英弘の部屋VOL.3 「コロナ禍と視覚障害者の単独歩行」

#視覚障害者 #白杖 #コロナ

「コロナ禍と視覚障害者の単独歩行」

 先日、TBS系の夕方のテレビ番組で、新型コロナウィルス感染症の拡大によって社会のさまざまな状況が変化し、その結果、障害者等にもたらされている影響について放映していた。つまり、さまざまな店が休業したり営業時間を短縮したりしていることによって音環境が変化したために、視覚障害者の単独歩行に著しい影響を及ぼしていることや、多くの人がマスクを着けたままで会話しているために、唇の動きを読み取れない聴覚障害者はコミュニケーションをとるのが困難になっているとの内容であった。
 このような番組が放映されたのは、私の印象では、極めて珍しいと感じた。
 そこで、視覚障害者の単独歩行(家族やガイドヘルパー等の助けをかりずに自分一人で外出すること、独り歩きともいう)における音環境や、その他の手がかりについて、私の経験も含めて述べることにする。
 視覚障害者とりわけ全盲の者は、単独での歩行にあたっては主として4種のことを手がかりにしている。白杖からの情報、音、空気の流れ、匂い、の4種である。

 「白杖からの情報」とは、視覚障害者が携えている白い杖の先等から伝わってくる地面等の状況のことである。
 視覚障害者は白杖をつくことによって、地面の凸凹や、溝があるかないか、段差があるかないか等の状況や、白杖が物にぶつかったときにそこに何かがあることを、白杖を通しての情報として感知する。
 したがって、白杖を正しくつかなかったり、白杖をつくことができないほど混雑していたりすると、地面の状況が情報として充分に把握できないために、危険な状況に陥ることがある。
 この「白杖からの情報」は、新型コロナウィルス感染症の蔓延によって制約を受けることはない。しかし、これ以外の三つの手がかりは、同感染症の蔓延の結果、さまざまな制約を受けている。

 「音」とは、まっすぐに歩くことや、いま自分がいる場所を確認するための手がかりになる情報である。
 晴眼者(目の見える人のこと)が壁にぶつからずにまっすぐに歩くことができるのは、本人が意識するかしないかにかかわらず、視覚を通して入ってくる情報によって、壁などにぶつからないように調節しながら歩いているからである。全盲の視覚障害者の場合は、視覚を通しての調節ができないので、「音」の情報を手がかりにするのである。つまり、周辺で発生しているさまざまな音のなかから、必要な音を目印(耳印)にして、その音の方向に歩くとか、白杖が地面を打つ音が壁などにあたる反射音を手がかりにして、壁などにぶつからないように歩くのである。(そのほかに、音がどのように関係しているかについて私は知らないが、壁の圧迫感をも手がかりにしている。)
 音は視覚障害者が道をまっすぐに歩くための手がかりになるだけではなく、いま自分がいる場所を確認するための手がかりにもなる。歩行している周辺ではさまざまな音がする。店員さんの声や、工場からの機械音、店先で物を焼いている音、パチンコ屋やゲームセンターの音など。それらの音によって、視覚障害者とりわけ全盲の者は、いま自分が歩いている場所を確認することができるのである。
 コロナ禍のために仕事場や店が休業したり営業時間を短縮したりすると、これらの音環境が普段のものとは異なってしまう。つまり、いつもの場所でいつもの音や声がしなかったり小さく聞こえたりする。この音環境の変化のために、視覚障害者は、まっすぐに歩くことやいま自分がいる場所を確認することが困難になってしまうことがある。そのために、道の真ん中で立ち止まったり、道を行ったり来たりしてしまうことがある。そのような視覚障害者を見かけたならば、ぜひ声をかけていただきたい。「どうしたのですか?」、「何か困っているのですか?」などと声をかけていただきたい。

 「空気の流れ」とは、とりわけ曲がり角を確認するための手がかりになる情報である。
 道をあるいていて曲がり角にさしかかると、そこでは必ず空気が流れている。風が吹いていることもあるが、風のようには感じなくても、顔等の皮膚が空気の流れを感じる。このことを手がかりにして、全盲であっても曲がり角を確実に察知することができるのである。しかし、大雨だったり、大雨ではなくても傘をさして歩いたりすると、いわゆる雨すだれや傘によって空気の流れが遮断されるので、曲がり角を察知することが困難になってしまうことがある。
 そればかりではない。コロナ禍ではマスクを着けていることが多いので、顔の半分ほどをマスクで覆っているために、顔全体で空気の流れを感じ取ることができないために、曲がり角を通り越してしまうようなことも多々ある。これも、コロナ禍での視覚障害者の安全な単独歩行を制約する一つの要因である。

 「匂い」とは、特定の匂いによって、いま自分がいる場所を確認することができる手がかりになる情報である。
 道を歩いているとさまざまな匂いがする。食べ物屋、喫茶店、仕事場などいたるところでそれぞれに特有の匂いがしている。視覚障害者はその匂いによって、いま自分がいる場所の確認のための手がかりにするのである。
 毎日いつもと同じ道を歩いていても、全盲の視覚障害者は周辺の景色を見ることができないので、いつもの道を歩いているかどうかの確認を確実にすることは困難である。ましてやコロナ禍のために音環境が変化しているので、音を手がかりにいま自分のいる場所を確認することが難しいこともある。
 いつもの所で、いつもの匂いがしてくると、道を間違えていないことを確信する。コロナ禍のために店が休業していると、いつもの匂いが流れてこない。そんなときには不安になってくる。「道を間違えたのではないだろうか」と。
 「匂い」の手がかりは、「音」の手がかりに比べると曖昧であることは否めない。なぜなら、風が吹いていると「匂い」は流されてしまうからである。「もうそろそろコーヒーの香りがするはずなのに!」と思いながら、いつもの喫茶店のそばを歩いているつもりであっても、風が吹いていると、コーヒーの香りが遠くまで流されるので、喫茶店ではない所なのに喫茶店がそばにあると思い込んでしまうこともある。その意味で、「匂い」の手がかりは「音」に比べると曖昧なのである。
 その曖昧な手がかりであっても、視覚障害者は自分のいる位置を確認するためには重要な手がかりなのである。新型コロナウィルス感染症の蔓延防止のためにマスクを着けていると、匂いを充分に感知することが困難になる。ここにおいても、コロナ禍では視覚障害者の単独歩行は制約されているのである。

 以上の主として4種の情報を手がかりにして視覚障害者は単独歩行をしているのであるが、これらの手がかりが「手がかりにならない」状況になることがある。その場合には、危険に陥ったり不安になったりする。
 白杖がつけないくらいの混雑した所では、白杖は足元しかつけないので、足元の情報しか伝わってこない。したがって、わずか50センチほど先に凸凹や溝があった場合などには、転倒したりする危険がある。
 音は視覚障害者の単独歩行にとって極めて重要な手がかりである。コロナ禍での社会の状況の変化は音環境の変化を引き起こしているので、単独歩行をしている視覚障害者にとっては外出しづらい状況になっている。とはいえ、大きな音があればそれでいいというわけではない。建設工事場や電車がすぐそばを通過するような道沿いでは、あまりにも大きな音がするために、音環境が破壊され、これまた視覚障害者にとっては単独での歩行の妨げになってしまう。
 空気の流れは曲がり角を察知するのに大いに役立つ手がかりであるが、強い風が吹いていたり、台風が接近したりすると、曲がり角での空気の流れを確実に感知することが困難になったり、風の音のために周辺の音が把握困難になったりする。
 匂いは、そもそも広がるものであるから、場所の特定には曖昧さがある。そのうえ、風などが吹いていると更に場所の特定が曖昧になってしまう。
 これらのことを考えると、以上の4種は視覚障害者の単独歩行のための手がかりであることは間違いないが、そのときの状況によっては確実な手がかりとはなり得ないことがある。したがって、視覚障害者が安全に単独歩行をするためには、これらの手がかりを補完することが必要である。それは、社会の人々の手助けである。社会の人々の声かけによる手助けは、単独歩行をする視覚障害者にとってはこれほど強い味方はない。コロナ禍でいかに社会の環境が変化しようとも、社会の人々の手助けがあれば、視覚障害者は安全に安心しながら単独での外出ができるのである。

 市民の皆さんの声かけに大いに期待するしだいである。

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