国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)

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国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)は、障がいのある方も、ない方も、
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愼英弘の部屋VOL.2 「コロナ禍と関東大震災」

#災害支援

 「コロナ禍と関東大震災」

 この夏も大雨による水害が各地で発生し、大きな被害をもたらしているが、昨今の大雨による災害発生のなかで、被害に遭われた人が他の人を迫害しているといった話は聞いたことはない。そのようなことはあってはならないことである。しかし、災害によって被害を蒙った地域において、一部の者が迫害されたという悲惨な歴史があった。そしてそれを彷彿とさせるような出来事が、新型コロナウイルスの感染拡大のなかで見受けられるのは誠に残念である。

 9月1日が巡って来るたびに、私は関東大震災のときの悲惨な出来事を思い浮かべる。同震災は今から98年前、つまり1923(大正12)年9月1日に発生した大震災なので、私はもちろん生まれていない。現実には経験していないが、文献を紐解くことによって、悲惨な出来事を思い浮かべることができるのである。

 関東大震災によって10万人以上もの人々が死亡する被害を蒙った。そればかりではない。自然災害による被害だけではなく、人が他の人を殺害するという迫害事件があった。

 大地震が発生したときに、火災が生じることは避けられない。阪神・淡路大震災のときもそうであった。ところが、関東大震災時の火災に対しては、「朝鮮人が火をつけた」などとの流言蜚語が飛び交い、朝鮮人に対する悲惨な殺戮が関東地方でおきた。

 日本人であるか、朝鮮人であるかは顔を見ただけでは判別し難い。そこで、「自警団」なる人たちは、人を見ると「15円50銭」と言わせた。朝鮮語(韓国語)では発語が濁音で始まることはほとんどない。したがって、「じゅうごえんごじゅっせん」とは言えず、「ちゅうこえんこっちゅせん」のように発音する。そのことだけで「朝鮮人だ」として殺害されたのである。

 このようにして殺害されたのは朝鮮人だけではない。「じゅうごえんごじゅっせん」とはっきり発音できない日本人も「朝鮮人だ」として殺害されている。たとえば、売薬の行商で千葉県に来ていた讃岐弁を話す香川県出身の2家族9人が「自警団」なる人たちによって惨殺された。そのなかには僅か2歳と6歳の子どもも含まれていた(『時事新報』1923年10月31日付け)。犠牲になったのは、そればかりではない。聞こえないために言葉を発することが困難な聴覚障害者(ろう唖者)も「朝鮮人だ」として殺害された(『読売新聞』1923年10月5日付け)。

 毎年9月1日には、関東地方の各地で、「自警団」なる者によって殺害された被害者に対する慰霊祭が行われている。そして、今もなお、当時の被害の真相を明らかにするための調査が続けられている。悲惨な自然災害が発生した状況のなかで、さらに悲惨な迫害が行われた歴史を忘れてはならない。

 昨今の一種の災害とも言える未曽有のコロナ禍において、感染者を差別したり、感染者の家族に対して商品を売らなかったり、感染地域から来た自動車に石を投げたりするなどの行為がなされることに対して私は憂慮し、心が痛む。関東大震災のときの殺害事件にまでなるとは思っていないが、それまでに至らなくても、たとえ排除しようとしたりする行為だけでも、そんなことはあってはならないことである。

愼 英弘

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